市指定 有形文化財
指 定 平成元年3月25日(第92号)
所在地 いわき市平字高月1
所有者 飯野盛男
長さ 4cm、幅 13cm、鈴径 4.7cm
杏葉は装飾馬具の一種で、胸懸や尻繋などに垂下して使用される。鈴がついていることから鈴杏葉の名で呼ばれ、古墳時代の6世紀ごろ盛んに用いられた。全国的に類品はそう多くはなく、関東地方を中心に、近畿地方にかけて出土している。市内の中田装飾横穴(国指定)からは優品が出土している。
この鈴杏葉は飯野八幡宮の宮司が明治初年ころ入手したものと伝えられ、大須賀いん(異体字・竹かんむりに均)軒の刊本『磐城史料』(明治45年)の中に「駅路鈴・飯野氏蔵」として掲載されている。しかし、市内の古墳等からの出土品かどうか不明である。
青銅製の鋳造品で逆三角形の剣菱形の各角に一箇ずつ鈴がつく形態で、鈴の中に小礫の珠が入っていて、振るとにぶい音がする。鈴の表面には隆線による円圏内に珠文が鋳出されており、とくに左鈴の頂点にある珠文は大きく乳首状となる。右と下の鈴にも同様の珠文が施されたらしいが、鋳型のくずれにより不明瞭である。背面には文様はない。また、剣菱体の表面の偏平な円圏内は、二条の隆線で十字に四分割され、やはり全体に珠文が配されている。交差する二条の隆線中央部の珠文は大きめである。
剣菱体の上部には、垂下するための皮帯を通す立聞と言われる方形の穴が開いている。
珠文と隆線と円圏による文様構成は、この鈴杏葉の製作年代の特徴を表わし、中田横穴出土の鈴杏葉と同じ形式的な特徴から、六世紀の遺品と推定される。
いわき市教育委員会発行「いわき市の文化財」 より抜粋
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