市指定 有形文化財
指 定 平成11年4月30日(第146号)
所在地 いわき市平字八幡小路84
所有者 飯野光世
総高 15.7cm、左右幅19.8cm
衝立風の陶製の小品。桐鳳凰図碩屏(市指定)と規模・作風が相似し、同じ工房で製作された可能性が高い。
腹と背に図像が描かれていて、双方いずれを主面とするかは決し難く、配置される和装仕様に応じて使い分けされたと思われる。一方の面には、俗塵を避け霞たなびく竹林境に集会する清談中の長衣をまとった隠士七人が描かれている。他面には、洲浜に浮かぶ巨厳から大振りの枝が伸びる竹葉と梅花が描かれ、袴様の台基の波形と調和し、いわゆる蓬莱図を構成する。
図像の外縁には押木が表現され、隅は木瓜面をなす。左右の側脚は欄干状をなし、帳台を支え、台瓶牙子の様式である。外縁の平坦面には雲気状の唐草紋を入れている。
鉄分を抜いたオフケの灰釉を全面にかけ、色調は青灰色に近いが、紺の着色で部分的に強調している。胎土は乳色の精錬された粘土を用い、焼成はよく堅緻である。
江戸時代中期から後期に流行した文人趣味と相まって、書院飾りとして使われたものと考えられる。竹林七賢図は、近世に障屏を飾る題材に頻用され、蓬莱図も同じく、鏡背意匠によく取りあげられている。江戸文化への憧憬とその受容をよく物語る資料である。こうした文藝への指向は、美術工芸への関心を高め、日本各地に窯産業を促すこととなった。
作者は不詳であるが、磐城焼として伝世し、当時の文人世相を示す作品として貴重である。なお磐城焼とは、磐城平藩主内藤家の御用窯で、延宝年間に内藤義概によって開窯された。
いわき市教育委員会発行「いわき市の文化財」 より抜粋
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