県指定 重要文化財
指 定 昭和62年3月27日(工第54号)
所在地 いわき市平字八幡小路84
所有者 飯野八幡宮
器高 41.0cm、口径 23.7cm
福島県立博物館に寄託中
この常滑大壺は、飯野八幡宮古式大祭の神事八十八膳献饌の際に献供される「一夜酒」を醸すのに使われた。
口唇部にわずかの欠損がみられるが、鉄分を含む陶土を、幅約5cm程度の粘土紐とし、それを約八段に和積整形している完器である。胎土は灰色で、細砂粒を含んでいる。焼成は比較的よく堅緻に仕上り、器肌も常滑特有の茶褐色を呈す。緑灰色の降灰自然釉は、口縁部上面と肩部に一様にかかる。底面は緩い凹凸が見られ、未調整である。少々の砂を蒔き、その上に器体を乗せて焼成した痕跡が窺える。
最大胴径40.2cm、底径16.7cmを測り、最大胴径は器高の三分の二位の箇所にある。
口縁部は垂直にN字形に近く折り返され、その幅が細かく、縁帯幅は約1.7cmを測り、上端近くに浅い凹溝がめぐり、肩の大きく張る器形で典型的な特徴を示す。器壁は1.3cm内外。肩部には刷毛状工具によるナデが施され縦筋目が走る。下胴部は輪積された器面を締めるが如くヘラナデされ、その工程は丁寧である。
この壺を効果的に特徴づけているのは、肩部に押された印花紋の存在である。直径4cm内外の陰五本源氏車紋が五箇、約5.5cm間隔にて一方の面に押圧されている。
この壺は、十四世紀に尾張国(愛知県)常滑窯で焼かれたもので、出土品ではなく、伝世したことに価値がある。
いわき市教育委員会発行「いわき市の文化財」 より抜粋
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